MANA ISLAND 1

フィジー島の地図 ィジーの空の玄関ナンディ(NADI)から目的地のマナ島リゾートへはボートに乗って渡る。地図ではそれほど遠くないように思えるが,大間違い。いくつかの島に寄って客を下ろしていく。次がそうだろう,と思っても,なかなか下船の合図がない。結局,最後に寄るのがマナ島だったので,存外時間がかかってしまった。

 とはいっても,船旅が楽しくないわけではない。リーフの内側なのだろう,海は浅く,波もない。青く澄み切った空と海。真っ白な雲。緑の島影。南洋ムードに満ちあふれている。ボートにはバンドが乗っていて,にぎやかな演奏でさらに盛り上げてくれている。

 それなのに,何が不満かというと,船上から鳥影が見えても船を止められないこと。早く島に着いてくれ,早く船から下ろしてくれと願うばかり。

オオアジサシ ナ島に着く直前,澪標にアジサシが2羽とまっているのを見つけた。何アジサシだかわからないが,すれ違いざまにシャッターを切る。

 空港で買い求めた図鑑にはアジサシのたぐいはまったく載っていなかったので,その場ではわからなかったが,帰ってから日本の図鑑で調べたらオオアジサシ(Great Crested Tern : Sterna bergii)だった。全長47cm。ウミネコほどもある,まさに大きなアジサシだ。

 南太平洋に行きながら,海鳥を撮ったのはこれだけ。見た記憶もあまりない。外洋ではないので少なかったからかもしれないが,海鳥にはあまり興味がなかった自分のせいだろう。

(後に,三脚を担いで歩いていたら,島のリゾートの従業員から声をかけられ,「自分の故郷の島には尾が長くて白い鳥がうじゃうじゃいるから,行ってみるといいよ。」と教えられた。どうやらネッタイチョウのことらしかったが,その島は100kmほど離れたところにあると聞いてがっかりした。)

 ナ・アイランド・リゾート(Mana Island Resort)は,マナ島の中央部にある。敷地は桟橋のある砂浜から島の反対側まで貫いているが,わずかの距離で,歩きでもあっという間に着いてしまう。

 フロントのある建物の周りにコテージが点在する。コテージの床はコンクリートで質素な作り。高床式ではないので,湿っぽい。夜になると壁にはたくさんのヤモリがへばりついている。初めはちょっと気持ち悪かったが,慣れてくるとそんなもんだろうと気にならなくなる。島の中では現金は持ち歩く必要はなく,レストランでも売店でもコテージの番号を言ってサインをすればOK。(当然,後で精算をするシステム。)日本の資本が入っているらしく,日本人スタッフもいて気分的にはかなり楽だ。

 手続きを済ませるとすぐにでも鳥見を始めたいところだが,家族連れとあってはそうもいかない。とりあえず,施設を見て回る。ビーチにはマリンスポーツ用品を貸し出す小屋がある。サンゴ礁の島らしく,砂は白い。海が好きな人なら,早く泳ぎたいところだろうが,あいにくあまり好きではないので心ときめかない。(泳げないわけではないが……。)中央棟とは別に,海に面したレストランもある。のんびり過ごすにはいい環境だ。でも,目は鳥を探している……。

ハイムネメジロ ーチの桟橋まで行くと,fijianらしき子どもたちが桟橋の先端で遊んでいた。遊び方はダイナミック。服を着たまま,2mくらい下の海に飛び込んでいる。小学校高学年くらいだろうか,年長の女の子に話しかけると,屈託のない笑顔で答えてくる。話しはじめると,ほかの子どもたちも集まってきて,10人くらいに囲まれてしまった。

 さすが,南の島の子どもたち。と思ったら,これがなかなかのやんちゃばかりであることがわかった。子どもたちはリゾートの従業員の家族で,普段はヴィチレブ本島に住んでいるが,クリスマス休暇で島に来ている,学校では英語も勉強しているなどという話のうちはよかったが,そのうちに自分の鼻を指差して,「日本語ではこれを何というのか?」と質問してきた。「ハナ。」と答えると,次は耳を指して,「これは?」と聞く。「ミミ。」と答えると,今度は手をたたいて大喜びではやし立てた。どうやら下ネタのようで,日本人客を見ると「ミミ」の発音をさせて喜んでいるらしかった。手玉にとられたというところか。

 て,桟橋から戻ると,女房殿のお許しが出て,鳥目的でひと回りする。レストランの裏手に花壇があり,大輪のハイビスカスが咲いていた。その蜜を求めて,メジロがやってきていた。なんだ,メジロだ,と思ったら,ちょっと色が違う。背中から胸にかけて灰色のハイムネメジロ(Silvereye : Zosterops lateralis)だ。全長11cm。

フィジーミツスイ 近くを通りかかった従業員に「BULA!」と声をかける。教わったばかりのフィジー語のあいさつだ。「BULA!」と返ってくる。リゾートの従業員は英語教育を受けているので,鳥の名前を聞いてみたら,「qiqi」と教えてくれた。「ギンギ」と読む。

 のギンギの小群に続いて,さらに小さい鳥を見つけた。黒い顔と背中,頭と咽が赤く胸は黄色,腹は白で,くちばしは細長くて下湾している。フィジーミツスイ(Orange-breasted Honeyeater : Myzomela jugularis)だ。

 10cmと,とにかく小さい。初めは黒っぽい鳥という印象だったのだが、いろいろな動きを見ているうちに頭や喉の赤、胸の黄色などが良く見えるようになった。ハイビスカスの花のあるところで待っているとじきに現れるのだが、動きがすばやいので写真を撮るのは難しく,結局,潅木の中に潜ったところしか撮れなかった。

 図鑑によると,フィジーにいるミツスイの仲間は5種。フィジー語で「mati(マティ)」と呼ばれるこのミツスイは,その中で一番小さい。ハイムネメジロが11cmなので,くちばしの長さを考慮すればその小ささがわかる。

 ナ島はリゾートアイランドだが,島のどこへでも行けるわけではなかった。島の東側にはちょっとした山がある。そこは聖地になっていて,島民以外は立ち入り禁止になっていた。数はわからないが,リゾート関係者ではない島民はそちら側に住んでいるらしい。

 どこまで行けるのかわからないが,途中に柵か看板でもあったら引き返すつもりで,三脚を担いで山のほうに向かう道を歩いていた。すると,どこから湧いて出てきたのか,数人の子どもが現れた。男の子も女の子もいるが,年齢は5〜10歳くらいだろう。驚いたことに,その中の何人かは短い山刀風のナイフを振り回している。とまどいながら「BULA!」とあいさつすると,子どもたちは近くに寄ってきて,怪訝そうに三脚につけたカメラを見ている。

 年かさの女の子が,たどたどしい英語で「鳥を殺すのか?」と聞いてきた。どうやら,500mm望遠レンズを大砲と(本気で)間違えているらしい。こちらもたどたどしく,「私は鳥を殺すつもりなんかないよ。写真を撮るだけだよ。どこかにきれいな鳥はいないかい?」と言ったが,どうも納得できない様子。そこで,三脚を下ろして子どもの目の高さに調整し,ファインダーを指差して,「のぞいてごらん。」とやったのだが,納得したのかしないのか,面白くないといった様子で,現れたときと同じように林のほうに消えていってしまった。

 結局,それ以上先へ進むのは止めにした。同じような格好をして出てくる大人には会いたくなかった。

フィジーモリツバメ テージが並ぶ敷地のほうへ戻ると,高い梢に並んでとまっている鳥を見つけた。青空をバックに白い下面がまぶしく見える。フィジーモリツバメ(Fiji Woodswallow : Artamus mentalis)だ。全長17cm。

 狭い枝先にぴったりと体を寄せ合ってとまっている。枝には余裕があるのだから,何も暑苦しいとまり方をする必要はなかろうにと思ったが,図鑑によると,どうもこの鳥の典型的な習性らしい。枝先にとまるのは,この鳥が昆虫食で,飛んでいる虫を捕らえるからのようだが,それなら少し離れていたほうが飛び立つのに楽そうだ。「レンバレヴ(Rebalevu)」と呼ばれるミナミチュウヒ(Swamp Harrier : Circus approximans)や「ガニヴァツ(Ganivatu)」と呼ばれるハヤブサ(Peregrine Falcon : Falco peregrinus)が上空を舞っているのも見たが,外敵から身を守る術ならあんなに目立つところにとまる必要はないだろう。

 さびしがり屋なのかな。

・・・・・・次はマナ島2・・・・・・